エンジェルバード

小説

小鳥遊みちるさん(@mt_316)の「文字」を買い取らせていただきました。


 

 

エンジェルバードとは、二トリア星の小さな人型で羽の生えた生物だ。その姿は美しく可憐で、まるで天使や妖精のようだとたちまち話題になった。ペットとして広く飼育されるようになったが、近頃飼い主のあいだにこんな噂が広まっていた。『エンジェルバードは嘘を見抜く』と――。

 

 

「リサ!ほんとごめん!」

 

 

帰宅早々スーツ姿の男は暗いリビングで待っていた女に詫びた。

 

 

「信じられない……今日は私の誕生日だっていうのに1週間も連絡くれないなんて……もう誕生日終わっちゃうじゃん!シュウくんと付き合って3年経つけど今までで最悪の日だよ!」

 

 

「ごめん、どうしても外せない仕事が入って忙しくて……」

 

 

「仕事なんて嘘!エンジェルバードを見てよ!羽が光ってるじゃない!」

 

 

2人の喧嘩をよそに楽しそうに飛び回るエンジェルバードの羽は、まるで魔法の粉をまぶしたかのようにキラキラと輝いていた。

 

 

「もういい!シュウくんなんて嫌い!知らない!」

 

 

自分の部屋へと帰ってしまったリサを止めることが出来ないまま、シュウはエンジェルバードに目をやった。羽はまだキラキラと輝いている。……じゃあ、リサが言った『シュウくんなんて嫌い!』もウソなのか?それなら、まだチャンスがある。カバンの中から小さな箱を取り出してリサの部屋の前へと向かった。

 

 

「リサ……ごめん、俺、嘘ついた。今日リサにどうしても渡したいものがあったんだ。受け取ってもらえないかな?」

 

しばらくの沈黙のあと、静かにドアが開き、リサが出てきた。

 

 

「リサにピッタリだと思って二トリア星から取り寄せたんだけど、途中で輸送トラブルがあって、今日に間に合いそうになかったから第3配送ステーションまで直接取りに行ってたんだ」

 

 

「スペースシャトルでわざわざ?なんでそんな…」

 

 

訝しげなリサに向かって跪き箱を開けると、彼女はそれ以上何も言わなくなった。

 

 

「リサ、俺と結婚してくれないか」

 

 

さっきエンジェルバードは輝いていた。でもあの噂は迷信かもしれないし、このプロポーズも断られるかもしれない。恐る恐るリサの表情を伺うと、目にいっぱい涙を溜めて顔が真っ赤になっていた。
「……よろしくお願いします」

 

 

そう言ってニコッと笑うリサの目尻から涙が零れた。

 

 

「っ!ありがとう!怒らせたり泣かしたりしてごめん。もうしないから」

 

 

「ううん、私もごめんね。シュウくん大好き」

 

 

抱き合う2人の周りを、もう輝きの消えたエンジェルバードが祝福するかのように飛び回った。


買取価格500円(ポルカURL

 

※この文章は、エイプリルフールをテーマに募集したものです。

この記事を書いたひと

小鳥遊みちる
小説
プチ恋愛”文字”小説『文字と君と文字』

きゃっぷ(@CAPLOREcom)です。   mayu!さん(@_kapibara_san …